今日は、令和6年度 第4問について解説します。
建物の賃貸借契約の有効性に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 賃借人が賃料の支払を7日以上怠ったときは、賃貸人は、直ちに賃貸物件の施錠をすることができる旨の特約は無効である。
② 賃借人が差押え又は破産手続開始の決定を受けたときは、賃貸人は直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は無効である。
③ 被保佐人が保佐人の同意を得ずに締結した期間2年間の定期建物賃貸借契約は無効である。
④ 定期建物賃貸借契約でない賃貸借契約の締結時に設定される、期間満了時に賃貸借契約を解約する旨の特約は無効である。
解説
賃貸借契約の有効性に関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ①
賃借人が賃料の支払を7日以上怠ったときは、賃貸人は、直ちに賃貸物件の施錠をすることができる旨の特約は無効である。
〇適切です。
社会の一般的な秩序や道徳観念(公序良俗)に照らして許されない行為は、法的効力が認められません。
過去の裁判事例では、「賃借人が賃料の支払を7日以上怠ったときは、賃貸人は、直ちに賃貸物件の施錠をすることができる」という特約について、公序良俗違反としてその効力が否定されました。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
法的な手続きを行わず、自らが行使して権利を実現することは、自力救済と呼ばれ、違法行為です。
法的な手続きなく「物件の施錠を行う」「建物に立ち入る」「直ちに明け渡しを強制する」といった特約は、公序良俗違反として無効になる場合があると理解しておけばよいでしょう。
選択肢 ②
賃借人が差押え又は破産手続開始の決定を受けたときは、賃貸人は直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は無効である。
〇適切です。
借主が差押や破産手続開始の決定を受けたことは、貸主からの解除事由や解約申し入れの理由にはなりません。
また、過去の裁判例においても、借主が差押または破産手続開始決定を受けたことを契約解除事由とする旨の特約は、無効であると判断されたケースもあります。
選択肢の記述はこれらの判断に沿った内容といえますので、この選択肢は適切です。
選択肢 ③
被保佐人が保佐人の同意を得ずに締結した期間2年間の定期建物賃貸借契約は無効である。
×不適切です
被保佐人は、自ら法律行為をすることができますが、一定の行為については保佐人の同意が必要です。
賃貸借に関しては、民法602条で定める期間を超える賃貸借をする場合は、保佐人の同意を得る必要があり、同意を得ずに行った場合は、取り消しの対象となります。
民法602条に定める賃貸借期間は、具体的には山林10年、山林以外の土地5年、建物は3年、動産は6か月です。
つまり、被保佐人が保佐人の同意を得ずに締結した期間2年間の定期建物賃貸借契約は有効です(なお期間が3年を超えている場合は、取り消すことができます)。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ④
定期建物賃貸借契約でない賃貸借契約の締結時に設定される、期間満了時に賃貸借契約を解約する旨の特約は無効である。
〇適切です。
期間の定めがある賃貸借契約について、期間満了で賃貸借契約を終了する場合には、当事者は期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知をする必要があります。(借地借家法第26条)
期間満了時に賃貸借契約を解約する旨の特約は、この規定に反していて、借主にとって不利な内容となりますので、無効となります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、正解は選択肢③となります。
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